3つのグラブの物語・・・

前回はバットについてだったが、今日はグラブについて書く・・・


巧大は小学校の時から、自分の野球選手としての生命線は守備だと強く思っていて、この守備に関しては絶対に誰にも負けたくないという思いが強く、その思いは現役最後までずっと変わらなかった・・・

それほど守備に対して強い思いを持っている分、使用するグラブに対してのこだわりは半端ではなかった・・・


今はミュージアムに保管してあるが、巧大の野球人生の中で試合で使用していたグラブは3つだけである。


この歴代の3つのグラブについて、過去に書いたエピソードを交えながら書く・・・

一つ目は、使用期間が小学校2年生から6年生までの4年間使用した、ローリングス製の当時本人が”アニキ”と呼んでいたグラブである・・・


このグラブは小学校時代に物凄く大切にしていたグラブで、しょっちゅう手入れをして使用していたが、やはり使用しているうちにどんどん傷んできて、流石に限界だと思い本人が喜ぶだろうと思って、サプライズで用意したスラッガーのグラブを私がプレゼントすると『アニキが可哀想だ・・・』と言って、そのスラッガーのグラブをつ使おうとせず、結局そのスラッガーのグラブは勿体無いので他の選手に譲ったことを思い出す・・・


そしてある日・・・

巧大が自分の部屋にこもって何かをやっていると思ったら、このアニキの傷んで破けた部分を自分で手縫していた・・・

その姿を見たときに、巧大にとってのこのグラブはただの道具ではなく自分の体の一部のようなものだと思い、金額の問題ではないと思いすぐにいつものベースボールショップへ持っていった。


すると案の定・・・

社長の奥さんから修理するよりも新しいものを買った方が全然安くつくと言われたが、無理は承知で先ほど書いたエピソードを社長の奥さんに話すと、そうであればと快く引き受けてくれて、熟練した職人さんが裂けた革を縫い合わせてくれたりして修理をしてくれた・・・


そして、このエピソードはこれで終わらない・・・

修理が終わりアニキを巧大と受け取りにいくと、社長の奥さんが「グラブをいつも大切にしてくれてありがとう」と言って巧大に直接渡してくれて、支払いをしようとして値段を聞くと最初に聞いていた値段の半分もいっていない・・・


おかしいと思って聞き直すと・・・

社長の奥さんが「この子のこのグラブに対しての気持ちを考えると、材料代しかもらえません・・・」と言ってくれた・・・

それから何度もまともな金額をお支払いすると言っても受け取ってもらえなかった・・・


それからである・・・

このベースボールショップにしか利用しない様になったのは・・・

こんなに血が通ったお付き合いができるショップは他にはないと思う!!

このグラブはそんな思いの詰まったグラブだった・・・


そして、二つ目のグラブはNIKE製で、本人が兄貴2世と呼んで中学1年生から高校2年生までの5年間使用したグラブである。


中学から硬式野球を始めた巧大だが、当時NIKEジャパン本社に勤務していた私の友人が、巧大に使ってほしいと言ってくれて、ありがたく使わせていただいたオーダーグレードのグラブで、その直後にNIKEがベースボール部門から撤退しプロのみへの供給となっため、今NIKEのグラブを使っているのはプロ選手のみで、とてもレアなグラブとなっている。


このグラブは本人が守備においてのプレースタイルを確立する上で、極めて重要な役割を果たしてくれたグラブである!!

巧大が社会人野球までやれたのも、このグラブのお陰で守備が良くなったお陰だと思っている・・・


もともと巧大は学童野球の時から当てどりをする傾向にあった。

しかし、これは誰かが教えたのでもなければ指示した訳でもなく、肩が強い方でなかったので、それをスピードと技で補おうとしていて、自分でたどりついた結果が当てどりであった。


学童時代は軟式なので、そんな軟式の弾むボールで当てどりをしている巧大を見て、周りから色々言われたし、私自身もある保護者さんから「また巧大はあぎゃん取り方しよるよっ!!」と言って笑われたりしていた・・・

しかし、監督の〇〇ちゃんも私も、きっと将来の役に立つからと思い何も言わず当てどりをする巧大を当時見守っていた・・・


それが中学になり硬式を始めると、軟式と比べ格段に弾まなくなる硬式球が思っていた通り、当てどりという捕球のやり方に見事ハマった!!

そこから現役引退までこのプレースタイルが続くこととなった。

それがのちに社会人野球の時に花開くことになり、その礎となったグラブがこのNIKEの兄貴2世だった・・・


そして三つ目のグラブがこれ・・・

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このグラブは、高校二年生からつい先日の現役を引退するまでの4年間使用した、アイピーセレクト製のグラブである・・・


見ての通り・・・

奥行きが全くなく、真っ平でポケットと呼ばれる部分がほぼ無い・・・

この形は兄貴2世の時からで中学・高校・社会人野球と約7年間、グラブ自体は変わっても形はほぼほぼ変わらない・・・


このグラブは高校2年の時、練習帰りに先ほどかいたベースボールショップに巧大が立ち寄った時に一目惚れして購入したグラブである。


このグラブに関してのエピソードは、高校時代に入部したての後輩がこのグラブを見て、真顔で「これ・・・どうやってボールを取るんですか?」という質問をされたという伝説のグラブである・・・(笑)


実は似たような質問をしょっちゅうされていたみたいで、もちろん巧大もボールをつかむべき時はつかむけど、基本的にグラブを開いたまま使うことが多く、ボール手離れがよくて瞬間的に握りかえができるグラブの形がこれだったのだろうと思うが、見慣れない選手にとってはこんなグラブでボールが取れるのかと思うだろうな・・・(笑)


しかし!!

これが、今!!

厄介な話になっている・・・(爆笑)


その厄介な話とは・・・

光記である!!


この前・・・

「光記!!お前!!兄ちゃんの真似はまだ早いって!!」

「グラブでちゃんとボールを掴めっ!!」

と、コーチが光記に言っていたと、すずかが言ってた!!(爆笑)


それはごもっともの話!!(笑)


これは・・・

もちろん!!

まだ小学校四年生の光記に対してできるはずが無い当てどりをやれと、私や巧大が光記に対して一度も言ったことがないし、むしろ反対にちゃんと掴めと言っている!!(笑)


これまでは・・・

グラブがまだ硬いのかなと思っていたが、流石に購入して一年が過ぎようとしているし、グラブを触ってみても十分柔らかくなっている・・・


しかし・・・

本人に聞いてもちゃんと掴んでいるというが、どう見ても掴んではいない・・・(笑)


多分、グラウンドや自宅でもずっと巧大を見て育っているので、光記の中でボールを掴むという事が、当てどりの事だと勘違いしていると思って、グラブを閉じなさいと表現を変えて先日も念を押しておいた・・・


おまけにすずかも巧大ほどではないが、当てどりの傾向がありソフトボールでセカンドをやっている時期に、よくボールを掴めと注意を受けていたが、光記にとっては兄も姉もそんな取り方なので、グラブを開いたまま打球を捕球する事が普通となっているのだと思う・・・


もし・・・

光記が巧大と同じようなスタイルで勝負するというなら、反対はしないし本人がやりたい様にやればいいと思っているけど、今の時期に当てどりは流石に無理と思うし、基本を重視してやっている今は目標から外れてしまうからな・・・(笑)


少し本題と逸れたが、今日は以前書いた内容と重複する点があったが、巧大が使用したグラブ3つを書いてみた・・・


今後、最後に書いたアイピーセレクトのグラブもミュージアム入りとなるが、これに関しては前回書いたバットとは違い、光記に受け継ぐのではなく巧大の野球人生の歴史として、このままの状態で保管しておきたい・・・

一人一人に合ったグラブの形があるように、巧大には巧大の歴史があるし光記には巧大とは違った歴史がこれから生まれるはずだから・・・


最後に・・・

決して自慢できる話では無いのだが・・・

引退が迫った時期にオープン戦が行われ、その時に巧大に飛んできた早いゴロを巧大がエラーして、それが結果スリーベースとなった時があった・・・


その時に私もグラウンドで実際に見ていたのだが、巧大が守るセカンドの後ろを守っていたセンターの選手が、監督に「お前!!内野ゴロが右中間に抜けるって、レフト寄りに守りすぎるからだろ!!」と言われていたが、その時にセンターの選手が「巧大がエラーをするとは思ってもいませんので、定位置よりレフト側に守っていました」と答え、監督が「おう・・・そうか・・・」というやりとりが私の目の前であった・・・


何度も書くが、これは決して自慢できる話ではない・・・

しかし・・・

その時に私は、巧大の守備の信頼の高さが、これほどあるんだと思ってとても嬉しかった!!


そして、さらに・・・

巧大自身は「すまん!!」と何度も言っていたが、近くを守っていた内野手達が声を合わせる様に「いやいや巧大のエラーは、イレギュラーだっただろ!!」と言っていた・・・


実は私の目から見ても他の内野手が言うようにイレギュラーだったのだが、その時に巧大は一言もイレギュラーだったとは言わず、周りにひたすら「すまん!!」とだけ言っている巧大の姿を見た時に守備に対してのプライドの高さをとても強く感じた。


こんなに高い次元のプライドを持って、巧大は守備をやっているんだと思ってとても嬉しかった!!


守備に対してプライドを持って野球を続けてきた巧大を支えてきてくれたグラブ達に感謝だな・・・


そして・・・

そんな風に巧大を育ててくれた歴代のグラブにも感謝・・・


この古びた3つのグラブ達の傷やシワの一つ一つに沢山の物語が存在する・・・

たかがグラブかもしれないが、巧大にとって必死に守ってきたきたのは白球だけではなく、巧大自身の守備に対しての高いプライドもこのグラブ達が守ってきたのだと思う・・・


このグラブ達は・・・

まさに巧大の野球人生そのものだと思う・・・