真剣勝負

私は長らく思い違いをしていた事に、最近気づいた・・・

 

『良き友であり、良きライバル』という言葉がある・・・

 

こんなのは、上っ面だけの綺麗事だと思っていた・・・

 

しかし・・・

長女とMの二人の関係を見ていると、『良き友であり、良きライバル』という言葉が成立する事に気付かされる・・・

 

Mは中学の頃から世代ナンバーワンスラッガーとして有名で、チームでは勿論の事、県選抜メンバーとしても4番を打っていた選手・・・

そして、長女と知り合った高校でも、1年生から4番を任されるほどで、身長も170cmを超え、名実共に素晴らしい選手である。

 

そんなMと全く正反対で・・・

過去の実績はおろか、ソフトボールの経験すら無い長女・・・

小学校1年生から野球をやってきたものの、ルールも実際の動きも似ているようで全く違うソフトボールで、M以外の選手達も含めて長女との実力差は誰が見ても明らかだった・・・

 

守備はなんとかなっても・・・

バッティングに関しては、上から下に投げ下ろされるボールを打つという経験しかなく、正反対に下から上に浮き上がって見えるソフトボールを打つというのは、想像を遥かに越す難しさであり、入学当初長女はまともにボールを打つことができなかった・・・

 

そんな長女を心配して、当時同じ高校に在学していた長男が、当時の監督に長女の様子を聞いた事があった。

その時に、監督は「守備はいいけど、バッティングがおもちゃだね。」と言われたと、私にコッソリと教えてくれた事を今でも覚えている・・・

 

しかし・・・

そんな事を長女には言えず、なんとか他の選手に追いつくようにと、週末に練習が終わると、光記が練習をやっている学童のグラウンドでの自主練を繰り返していた・・・

 

そんな実績も実力も対照的な、Mと長女の二人なのだが・・・

入学直後からとても仲が良かった・・・

 

長女は普段の学校生活において、Mは本音が言える一番の友達だという。

しかし、部活になると・・・

ソフトボール選手として、Mの事をものすごくリスペクトしていて、現在も当時とその気持ちは変わらない・・・

 

そして・・・

Mはというと・・・

 

もちろん友人として、長女の事をものすごく信用してくれていて仲が良い。

そして不思議なのが・・・

ソフトボールの実績も経験もない長女を、同じようにリスペクトしてくれているのだ・・・

 

その不思議と思える原因を探るために掘り下げると・・・

 

Mは先ほど書いたように、中学の頃から頭角を表し実績を残してきた・・・

そんな、ある意味目立つ存在であるが故に、チームの期待を背負いその期待に答えようと一生懸命努力を積み重ねてきた苦労人である。

 

しかし・・・

そんな目立つ存在であるが故に、選手間だけではなく保護者までもがやっかんだり僻んだりするようになり、中学生では味合わなくてもいいような理不尽な経験をして、それが嫌になり高校ではソフトボールはしないと決断し、何校も特待の話が来ても当時断ったらしい・・・

 

そして長女・・・

うちの長女は小学校1年生から長男と同じ学童野球チームで野球を始めた・・・

私が一番悪いのだけど、やっとこれから試合にも出れる様になるという4年生の時に、二つ違いの巧大が、自宅から遠方の中学野球のクラブチームに入団するすることになり、私も嫁さんもそれぞれ別のチームを行ったり来たりするのは難しいとの判断で、長女に学童野球チームを続ける事が難しいことを伝え、学童チームを退団する事になった・・・

 

今思えば長女に対して、ものすごく申し訳ない事をしたと思っている・・・

 

しかし・・・

巧大が中学の時の球団が、長女がグラウンドの片隅で楽しそうにキャッチボールしている姿を見て、練習生として受け入れていただくことになり、中学生に混じって練習をしてきたのだが、これまたこれからが本番という時に、拡張性の偏頭痛になってしまい、そこで野球事態を断念する事になった・・・

 

そんな・・・

二人が高校で出会うことになるのだが・・・

 

共通しているのは、形は違うが大好きである野球やソフトボールを、一旦辞めると決断していること・・・

そして、もう一つの共通点・・・

Mもチーム内での激しい競争を経験しており、長女も小学校や中学時代からクラブチームならではの厳しい競争の世界を見て育っている・・・

 

そんな共通した経験をしたからなのか、長女に話を聞くと、Mとは価値観が似ていて一緒にいて楽だという・・・

 

言葉を交わさなくても、お互いに思っていることがわかるし、お互いに出す答えも同じだと言う・・・

 

そんな二人の関係ができたのは、高校に入学してまもなくだった・・・

 

そして、Mは高校入学直後からチームの期待に次々に答え、あっという間にチームの主軸として4番に定着し活躍を見せる!!

 

長女はというと・・・

たまに代走で起用される様になり・・・

たまに代打でバッターボックスに立たせてもらうようになった・・・

 

そして・・・

代打と走塁で少しずつ結果が出る様になり、下位打線で使ってもらえるようになった。

 

やがて・・・

バントが得意なので2番で起用されるようになり、その時ぐらいからヒットもちょくちょく打てるようになり、足もあることから1番で起用される様になる。

 

そのころに・・・

やっとソフトボールに慣れ、徐々に力もついてきて、3番や5番で起用される様になった。

 

ちょうどそれぐらいの時だった・・・

警戒を強める相手バッテリーがMとまともに勝負をしなくなり、場面によっては四球覚悟の配球を行ったりして、その影響からかMが自分のバッティングができない状況へと徐々になっていった・・・

 

その時にちょうど・・・

長女のバッティングが上がってきて、お互いに日替わりで4番を打つようになったのだが、そこからが二人の関係性の凄いところ・・・

 

そんな関係性を確信する出来事があったのは去年の12月だった・・・

私はこのMのお父さんと、チーム内で一番親しくさせてもらっており、本人達だけではなく父親同士も価値観が似ている・・・

 

なので・・・

両家族で忘年会をやったのだが、その時に『お互いが刺激しあって、最終的に二人とも成長できればいい!!』みたいな事を言った・・・

 

その時に気づいた!!

この二人は、ただのベッタリで上っ面だけの友達ではなく、お互いがお互いを認め合って深い信頼関係で結ばれているんだと・・・

 

こんなこと書くと・・・

今問題になっているジェンダー問題だと言われるかもしれないけど、17歳の女の子同士でもこんな関係が築けるんだ・・・と思った。

 

アスリートとしてお互いが認め合い、高い意識を持ってお互いに鎬を削ることによって、お互いがお互いを高め合うことができる、という事をこの二人はわかっている・・・

 

自分が進歩することはライバルを進歩させることだと・・・

それが・・・

チームの進歩につながるのだと・・・

 

安っぽく無いわ・・・

この二人の関係・・・

 

最近、調子を上げてきたM・・・

現時点で4番に座っている長女・・・

 

やがて・・・

実績も実力もあるMが4番を奪還する日が必ず来る・・・

 

しかし・・・

長女もその4番を簡単に渡さず、取られてもまた取り返すという・・・

認め合った二人だからこそできる、質の高いプライドをかけた争いを見たい!!

 

早速、昨日書いた全国大会が今月末に控えている・・・

対戦相手となる強豪校達もまた、その質の高い凌ぎ合いを選手同士で日々行っている。

そんな質の高いチームとの対戦の中で、Mと長女の質の高いプライドをかけた争いを見てみたい!!

 

そして、その争いが・・・

来るインターハイに、このプライドをかけた争いがチームにどんな化学反応を起こすのか・・・

 

お互いの過去に・・・

理由は違っていても、自分が大好きな事をやりたくてもやれないという絶望を味わい底を見たもの同士・・・

 

その底を見たもの同士だからこそ、今こうしてお互いを認め合いプライドを賭けた争いができるのかもしれない・・・

 

まさに・・・

 

良き友であり・・・

良きライバル・・・

 

なんか最近・・・

二人が・・・

俺には、かっこよく見えるわ・・・