棟梁

私の祖父は、代々続く大工の棟梁だった。
腕はいいが、肥後もっこす(頑固者みたいな・・・)で大酒飲み・・・(笑)
現役バリバリの時は、典型的な昔堅気の職人だったらしい・・・

私が生まれた時はすでに現役を引退し、男の子に恵まれなかったので、跡継ぎがおらず大工業は廃業していた。

私は高齢者相手の職業であり、地元近くの事業所が勤務先・・・
おまけに、全国的にも滅多に聞かないような苗字なので、名乗れば一発で「〇〇さんところの孫だろ⁈」と聞かれ、すぐに身元がバレてしまう・・・(笑)

そんな方々が言ってくださるのは・・・
「アタの爺さんは腕が良かった!!」
「釘一本も使わず、家を建てていた!!」
「この家も、アタの爺さんが建てた家ばいっ!!」

こんな言葉を何回も耳にした・・・

つい最近も爺さんの話になって、ふと思い出したことがあった・・・

そんな爺さんなので、小さいころから私が遊ぶおもちゃは、爺さんの手作りのおもちゃがたくさんあった・・・

積み木も・・・
川遊びする時の船も・・・
色んなおもちゃを木で作ってくれた・・・

そして、そのおもちゃをしまう棚もおもちゃ箱も・・・
自分の部屋が欲しくなれば、爺さんがリフォームや増築して部屋も作ってくれた。(笑)

そんな時も、釘を使用せず木枠をはめ込んでいくやり方だった・・・

夏休みの宿題で本棚を作っていても、爺さんがそれを見て手直しするもんで、それはそれは見事な本棚が完成してしまい、どう見ても小学生が作った完成度ではなく、家具職人が作った様な作品に仕上がり、逆に学校に持っていけなくなっていた・・・(笑)

だから、普通だったら「手伝って!!」と言うところだけど、うちの場合は爺さんに見つかると完成度が高すぎて、学校に持っていけなくなるんで、コソコソと作業小屋の片隅で作った思い出がある・・・(笑)

そんな爺さんが、作業しながら言っていたこと・・・

木材は、気候や湿度で膨らんだり縮んだりする・・・
それを、釘でがっちり決めてしまうと、木材が割れたりするんで強度が落ちてしまう・・・

伸び縮みする材料は、伸び縮みする材料で固定しなければいけないし、伸び縮みしない材料は、伸び縮みしない材料で固定しなければいけない・・・

みたいなことを、言っていたのを思い出した・・・

そして・・・
木材によっては節が沢山あって、そんな木材は硬くて加工するのにも手間がかかり厄介なので、材木屋に言って返品交換する職人がいるけど、そんな節だらけの木材を生かす方法は沢山ある・・・

そんな木材に一手間加え磨き上げれば、床の間のちょっとしたかっこいい飾り柱になる・・・

「人間も一緒だぞ・・・」

みたいなことを言っていた・・・

当時、私は幼かったので爺さんが言いたいことは、正直言って理解でいなかったけど、今思い返せば深い話をしてたんだなあ~

と・・・

これを子育てに当てはめると、人間は伸びもするけど後退もする・・・
時代も変われば、考え方も変わる・・・
それを、自分の固定観念という釘で固定しようとしても、せっかくいい素材であっても強度は落ちてしまう・・・

一見・・・
扱いにくい者でも、視点を変えて欠点ではなく個性と見れば、逆にその部分は他のものにはない大きな武器となる・・・
見栄えも悪く加工しにくい安価な節だらけの木材でも、使い手が一手間加えることにより、その欠点が芸術となるのと一緒で・・・
安価に仕入れて、手を加えて満足いくものに仕上げれば、そのぶん利益は大きくなる・・・

いずれも・・・
育てる側の見方・考え方次第だということ・・・

こんなこと考えていると、私はまだまだ引き出しが足らないし器もちっちぇ~!!
子育て中の親としては、まだまだ丁稚奉公中だなあ~
棟梁になるまでには修行が足りない・・・(笑)

「人間は生き物だもの・・・」
by ガチャピン・・・(笑)